労働審判は、簡易な手続きで行えることに加えて、紛争の解決までが早いことが特徴です。その一方で、会社側としては時間が限られているため、入念な準備が難しく、効率的に準備していかなくてはなりません。
そこで重要になるのが、「答弁書」です。今回は、労働審判における答弁書の重要性や基本的な記載事項について解説します。
■答弁書の重要性
労働審判では、最初の期日で事実認定から心証形成まで終えてしまうのが一般的です。そのため、最初の期日までに可能な限り有利な方向に進めておく必要があります。
第一回の期日までに提出するのは答弁書のみの場合がほとんどですので、答弁書によって第一回期日の流れが左右されるのです。
答弁書を分かりやすく作成すると、期日前に会社の主張を理解してもらいやすくなることに加えて、期日当日の流れも答弁書の内容に基づいたものでできます。
企業側の反論から期日が進むだけでなく、質問や反論が予想しやすくなり、限られた時間で効率的な準備も可能です。
■基本的な記載事項について
では、答弁書にはどのようなことを記載すれば良いのでしょうか。
簡単にいえば、具体的事実と法的主張を適切に記載します。
(1)具体的事実
争点になっている点について具体的に記載します。
例えば、残業代の未払いを挙げると以下の様なものが該当します。
・相手の主張、請求内容
答弁書は相手の主張に対する反論であるため、まず相手が何を主張し、どんな請求をしているのかを正確に把握する必要があります。
・反論
次に、その主張や請求に関して反論を記載します。
相手の主張の誤りを指摘したり、こちらの反論を分かりやすく記載します。
例えば、勤務時間の誤りがあれば、それを主張します。
実際の事例において、どのようなことを記載するべきかは、ケースバイケースなので、専門家と相談しながら作成することをおすすめします。
(2)法的主張
具体的事実がどの法律に該当するのかを記載します。
法的主張に関しては、法律の知識や経験が求められるのはもちろん、過去の判例に関する知識も求められます。
そのため、法的主張においても専門家と相談しながら作成することをおすすめします。
(3)全体的な構成
全体的な流れとしては、具体的事実を挙げ、それがどの法律や判例に該当するのかを述べ、最後に結論を述べるという形をとります。
裁判においては、法的三段論法という方法で判決を下すので、答弁書をその方法に沿ったものにし、分かりやすいものにするためです。
■まとめ
今回は、労働審判における答弁書の重要性や基本的な記載事項について解説しました。
答弁書の完成度次第で、第一回期日までの準備や当日の流れなどを有利に運べる可能性が高まります。
完成度の高い答弁書を作成するには、法律や判例の知識が必要になるため、専門家と相談しながら作成することをおすすめします。
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労働審判における答弁書の重要性や基本的な記載事項について
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