家族や親族が亡くなり遺産相続が発生したとき、「誰が相続人になるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。相続人の範囲は民法という法律で厳格に定められており、家族や親族との関係性によってその対象者は変わります。そこで当記事では、法律の知識がない方でもわかるよう、相続人になれる人の範囲と順位について解説します。
相続の基本
故人(被相続人)の遺産を受け取る権利を持つ人物は、民法という法律によって決められています。その権利を持つ人たちを「相続人」と呼びます。
親族だとしても、誰でも相続人になれるわけではありません。法定相続人に認められているのは配偶者と一定範囲の血縁者だけです。
配偶者は必ず相続人
法定相続人のなかでも配偶者(法律上の婚姻届が受理されている夫または妻)は、必ず相続人になることができます。
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
引用:e-Gov法令検索 民法第890条前段
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
つまり、法律上、配偶者は優先的に遺産を受け取る権利を与えられているのです。
一方、事実婚や内縁関係のパートナーの場合は法的な婚姻関係にないことから、相続人にはなれません。長く連れ添ったとしても、法律上は他人扱いですので注意が必要です。
遺言書があれば相続人ではなくても遺産を取得可能
相続人に該当すれば、法律に従い自動的に遺産を取得する権利を持ちますが、故人が遺言書に「土地Xを○○へ遺贈する。」などと記載していれば、贈与を行うときのように無償で遺産を譲与することができます(この行為を「遺贈」と呼ぶ)。
そのため内縁関係にとどまるパートナーであったり、一切血縁関係を持たない友人などであったりしても、遺言書に従い遺贈が実施されるときは遺産を取得できるのです。
血縁者が相続人となる範囲とその優先順位
相続人となれる血縁者は、故人との関係により順位付けがなされています。この順位が高い人から順に、相続人になる権利を獲得します。各順位の人が一人でもいれば、後の順位の人は相続権を得られません。
第1順位:直系卑属(子・孫・ひ孫)
配偶者と並んで優先的に相続する権利を持つ相続人は、「直系卑属」です。
つまり、故人に子どもがいれば、配偶者とその子どもたちが相続人となり、親や兄弟姉妹は相続人になれません。また、子どもが亡くなっている場合は孫が「代襲相続人」として権利を得ることもできます。さらにその孫も亡くなっている場合はひ孫が相続人になる、という具合に血縁者が続く限り代襲されていきます。
養子縁組をした場合の養子も実子と同じように第1順位の相続人となれますし、相続開始時点で胎児であった子も、生まれた場合は相続人となることができます。
(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
引用:e-Gov法令検索 民法第886条
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
第2順位:直系尊属(父母・祖父母)
第1順位の子どもも代襲相続する孫もいない場合、次に権利が渡るのは「直系尊属(故人の親や祖父母)」です。
親が相続人となり、親が亡くなっていれば祖父母が権利を持つことになります。
なお、父か母のいずれかが存命であれば、祖父母へ相続権は渡りません。
第3順位:兄弟姉妹(甥・姪まで)
子ども・孫や親・祖父母がいない場合に、最後に相続権を得るのが兄弟姉妹です。
兄弟姉妹に加え、兄弟姉妹がすでに亡くなっていれば、代襲相続としてその子(甥・姪)が相続人になります。
ただし、兄弟姉妹の代襲は一代限りであり、甥・姪の子にさらに権利が引き継がれることはありません。
相続人になれない人
内縁関係の配偶者が相続人になれないように、相続権に関して注意すべきケースがいくつかあります。
たとえば「配偶者の連れ子」が挙げられます。連れ子と被相続人が養子縁組をしていなければ、法的に連れ子は被相続人の子どもではないため相続人になれません。
「元配偶者」に関しても、いったんは正式に配偶者になっているものの離婚をしたことによってその関係性は解消されていますので、元夫・元妻を被相続人として相続することはできません。
「相続欠格にあたる方」「相続の廃除をされた方」に関しても相続をできません。法律上、相続人に該当する血縁者であったとしても、生前に被相続人を虐待していたケースなど一定の場合には相続権が剥奪されることがあるためです。被相続人自身の意思に基づき手続きを経て相続権を剥奪する仕組みが「廃除」、特に悪質な行為がある場合に自動的に相続権を失う仕組みが「欠格」です。
相続人の確定には戸籍のチェックが必要
実際の相続手続きでは、戸籍謄本をさかのぼって相続人を確認していかなくてはなりません。
「子どもはいなかったはずだから、親である私が相続人になるだろう」と考えて遺産分割を進めていたところ、実際には子どもがいて、相続できなかったという状況が起こり得ます。
認識できていない、予想外の人物が相続人として表れるケースがあるため、遺産分割協議を進める前にしっかりと戸籍を集めて調査することをおすすめします。