相続が発生したときに、面倒に巻き込まれたくないなどの理由で相続放棄をした場合、全くお金が入ってこないとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、相続放棄をしてもお金が一切手に入らないというわけではありません。
申請を行えば手に入るものもあります。
今回は、相続放棄をしても遺族年金や未支給年金は受け取れるのかについて解説します。
■遺族年金は受け取れるのか
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の二つがあります。
遺族基礎年金とは、国民年金に加入している方が亡くなった際に、生計を同じくしていた18歳までの子がいる配偶者または子が受け取れる年金です。
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入している方が亡くなった際に、生計を同じくしていた遺族が受け取れる年金です。
遺族厚生年金を受け取れる人は、まず配偶者または子、次に父母、それ以降は孫→祖父母の順です。
これらの遺族年金は相続放棄をしても受け取れます。
遺族年金は遺族が固有の権利によって受け取るもので、相続財産に含まれないからです。
■未支給年金は受け取れるのか
未支給年金とは、亡くなった方がその時点でまだ受け取っていなかった分の年金です。
年金は、偶数月の15日に前の2ヶ月分が振り込まれます。そのため、例えば7月に亡くなった方にも8月に6月と7月分が振り込まれます。この亡くなった後に振り込まれた年金が未支給年金です。
未支給年金を受け取れるのは、亡くなった人と生計を同じくしていた人のみで、受け取り順位は以下の通りです。
配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹→それ以外の3親等以内の親族
この未支給年金も遺族年金と同様に、相続放棄をしても受け取れます。
未支給年金も遺族が固有の権利によって受け取るもので、相続財産に含まれないからです。
年金受給者が亡くなった際には、死亡届を提出して年金の支給を停止させるのですが、そのとき一緒に未支給年金の申請を行うのが一般的です。
必要な書類は事例によって多少異なりますが、代表的なものは以下の通りです。
・死亡届
・亡くなった方の年金証書
・未支給年金請求書
・戸籍謄本
・住民票
戸籍謄本は亡くなった方との続柄を証明するため、住民票は生計を同じくしていたことを証明するためのものです。
世帯や住所が異なるが、生計を同じくしていた場合には、住民票以外の生計を同じくしていたことを証明できる別のものが必要です。
■まとめ
今回は、相続放棄をしても遺族年金や未支給年金は受け取れるのかについて解説しました。遺族年金と未支給年金は両方とも相続放棄しても受け取れるもので、判例もそれを認めています。自分が、受け取れる要件に当てはまっているかなど、何かお悩みの際は専門家に相談することをおすすめします。
また、遺族年金と未支給年金以外にも相続放棄しても受け取れるものはあるので、この二つ以外にも受け取れるかどうか気になるものがある方もお気軽にご相談ください。
中日綜合法律事務所は、愛知県・岐阜県・三重県を中心に、皆さまの相続・遺言業務をサポートしております。
歴史と実績のある法律事務所として、皆さまに最善の解決策をご提供いたしますので、お気軽にご相談ください。
相続放棄をしても遺族年金や未支給年金は受け取れる?
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