050-3138-4847
受付時間
平日 9:00~17:30
定休日
土曜、日曜、祝日

遺言書があるときの相続人の取得分~遺留分と遺言の優先順位について~

  1. 中日綜合法律事務所(弁護士 熊谷 考人) >
  2. 相続・遺言に関する記事一覧 >
  3. 遺言書があるときの相続人の取得分~遺留分と遺言の優先順位について~

遺言書があるときの相続人の取得分~遺留分と遺言の優先順位について~

各相続人の取得分は「法定相続分」として定められているところ、遺産分割協議で好きな割合へ変更することは可能ですし、生前に遺言書を作成していれば遺言内容で強制的に分割されます。

そこで遺言次第では相続人でも遺産を受け取れない可能性が出てくるのですが、そんなときは「遺留分」に注目してみてください。法定相続分の一部を確保することができるかもしれません。

遺留分は遺言より優先される

結論からいうと、遺留分の侵害が認められるときは「遺言内容よりも遺留分の請求が優先される」といえます。

そもそも遺留分制度は遺族の生活保障などの観点から作られた仕組みで、遺言によってほとんど財産を受け取れなかった方でも最低限の取り分を主張できるようにルールができています。
法律上認められる遺留分に満たない価額しか取得できていないときは、その満たない部分について侵害を受けたと考え、その侵害分を受遺者等に請求(遺留分侵害額請求)するのです。

物の返還ではなく金銭の請求

遺留分が優先されるとはいえ、「遺産として受け取った物それ自体の返還請求はできない」ことに注意してください。

残された家族等の生活について経済面で保障するのが遺留分制度の趣旨ですので、請求できるのは金銭のみです。

例えばある土地が被相続人唯一の財産であったとして、遺言で相続人以外にすべて遺贈されたとしましょう。相続人が遺留分の主張をしても土地を取り返すことはできず、金銭で支払ってもらうことになります。

遺留分の侵害がなければ遺言に優先しない

遺留分は「遺産の2分の1に法定相続分を乗じた額」、または「(相続人が直系尊属しかいないときは)遺産の3分の1に法定相続分を乗じた額」です。
※直系尊属とは被相続人の親や祖父母などを指す。

遺言で法定相続分より少ない額しか受け取れていないとしても、この遺留分は獲得できているのなら遺留分の侵害額はゼロです。その他の財産がすべて被相続人の知人に遺贈されていたとしても何も請求はできないため、遺言に優先するとはいえません。

遺留分侵害額請求の具体例

いくつか遺留分侵害額請求の例を、具体的な数字を使って紹介していきます。

遺言書で全財産が遺贈されているケース

遺産の総額5,000万円、相続人は配偶者Aと子B・C、遺言により財産を与えられる受遺者をXとします。全財産をXに与えるとする遺言書が作成されている場合、A・B・Cの遺留分侵害額は次の通りに算出されます。

《 STEP1:それぞれの遺留分を計算 》

Aの遺留分 = 5,000万円×(1/2×法定相続分の1/2)

      = 5,000万円×1/4

      = 1,250万円


BおよびCの遺留分 = 5,000万円×(1/2×法定相続分の1/4)

          = 5,000万円×1/8

          = 625万円

※計算の基礎となる額(ここでいう5,000万円)には、過去の贈与財産を含めることもある。


《 STEP2:それぞれが請求できる額(遺留分侵害額)を計算 》

Aが請求できる額 = 遺留分-取得できた遺産

         = 1,250万円-0円

         = 1,250万円

BおよびCの請求できる額 = 遺留分-取得できた遺産

             = 625万円-0円

             = 625万円

※簡単のため「取得できた遺産」としているが、債務を承継しているならその分を加算する。過去の贈与分を含めるケースもある。

遺産の大半が遺贈されているケース

遺産の総額5,000万円、相続人は配偶者Aと子B・C、遺言により財産を与えられる受遺者をXとします。全財産のうち4/5をXに与えるとする遺言書が作成されており残りを法定相続分で分割する場合、A・B・Cの遺留分侵害額は次の通りに算出されます。

《 STEP1:それぞれの遺留分を計算 》

前項で計算した通り、Aには1,250万円、BおよびCには625万円が遺留分として認められている。

《 STEP2:それぞれが取得できる分を計算 》

全財産の4/5が遺贈されるため、残りの1/5を法定相続分で分割。

Aの取得分 = (5,000万円×1/5)×法定相続分の1/2

      = 500万円

BおよびCの取得分 = (5,000万円×1/5)×法定相続分の1/4

          = 250万円

《 STEP3:それぞれが請求できる額(遺留分侵害額)を計算 》

Aが請求できる額 = 遺留分-取得できた遺産

         = 1,250万円-500万円

         = 750万円

BおよびCの請求できる額 = 遺留分-取得できた遺産

             = 625万円-250万円

             = 375万円

相続人が父と母だけのケース

遺産の総額3,000万円、相続人は父Dと母E、遺言により財産を与えられる受遺者をXとします。全財産をXに与えるとする遺言書が作成されている場合、D・Eの遺留分侵害額は次の通りに算出されます。

《 STEP1:それぞれの遺留分を計算 》

DおよびEの遺留分 = 3,000万円×(1/3×法定相続分の1/2)

          = 3,000万円×1/6

          = 500万円

《 STEP2:それぞれが請求できる額(遺留分侵害額)を計算 》

DおよびEの請求できる額 = 遺留分-取得できた遺産

             = 500万円-0円

             = 500万円

ここではごく簡単な計算例を紹介しましたが、実際の場面ではより複雑な計算を要する可能性もあります。また、受遺者に対する請求の際にトラブルが起こる可能性もありますので、遺言内容に不安があるときは遺留分の主張をしたいときは弁護士にご相談ください。

中日綜合法律事務所(弁護士 熊谷 考人)が提供する基礎知識

  • 債権回収を弁護士に依頼するメリット

    債権回収を弁護士に依頼...

    債権回収を行う際に、弁護士に依頼するメリットとは何でしょうか。 まず、主な理由として、一般人では知り得...

  • 遺産相続

    遺産相続

    遺産相続は突然やってきます。 もし近い親族の方が亡くなり、あなたが相続人となった場合、その方が亡くな...

  • 法定相続人

    法定相続人

    もし、被相続人が遺言等を残していなかった場合、民法の方法(第5編相続 第2章相続人)に従って一定の近親...

  • 消費者対策・クレーム対応

    消費者対策・クレーム対応

    特定商法取引法や消費者保護法、消費者契約法など、消費者の権利を保護するために多くの法律が制定されていま...

  • ホームロイヤー契約書

    ホームロイヤー契約書

    ホームロイヤーは、家庭内や日常生活で起こる様々な法律トラブルについて、いつでも気軽に相談できる顧問弁護...

  • 契約書のリーガルチェックが必要な理由とは

    契約書のリーガルチェッ...

    契約書は安全かつ円滑な企業活動のために重要な文書であり、その内容の妥当性を評価することはリスク管理の...

  • 起業するときに用意する契約書とは|作成すべきシーンや契約内容について

    起業するときに用意する...

    起業する際、さまざまな契約を締結します。一緒に働くメンバー、株主、取引先など、関係者が増えるほど作成...

  • 遺留分

    遺留分

    「遺留分」とは、一定の相続人に最低限保障されている相続できる割合のことをいい、この遺留分を請求できる権...

  • スタートアップ企業が顧問弁護士をつけるメリットとは?

    スタートアップ企業が顧...

    会社を設立したい場合、誰に相談すればよいかわからないと考える方もいるかもしれません。 今回はスタ...

よく検索されるキーワード

ページトップへ